生産性向上に向けて時間設計を行ための5つの定理

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現代の社会では、国際的な要請やネットワーク化の進展、若者の労働観等の様々な
要因により、労働者1人当たりの平均年間総実労働時間が短くなってきています。
しかし、国内のみならず国外との競争も激化しており、限られた時間で多くの成果を
出すことが求められています。
生産性を向上させるための効率的な時間の使い方が、
これまで以上に重要となってきています。
そもそも「生産性」とは何でしょうか。
大辞林によると、

「生産のために投入される労働・資本などの生産要素が生産に貢献する程度。
生産量を生産要素の投入量で割った値で表す。」

とあります。
すなわち、「生産性 = 生産量(成果)/投入量(生産要素)」で表すことができ、
ここでの投入されるものは、
資本、土地、原料、機械設備、時間
といった生産要素となります。
そして、産出されものとしては、
生産量、生産額、売上高、付加価値
といった成果となります。
生産性を向上させるということは、「少ない生産要素で多くの成果を上げる」
と言えます。
単純に考えれば、生産要素の投入量を増やすと成果が増えると言えますが、
投資額や土地、機械設備を簡単に増やすことは難しいです。
しかし、時間は段取り良く効率的に使うことで投入できる投入量を増やすことができます。
私達が日々の業務を行っている中で、1日の時間の使い方は大きく5つに
分類することができます。

①今、成果を生んでいる時間

→最大限確保できるように努める必要があります。

②過去の成果を処理する時間(クレーム処理、報告書作成)

→出来るだけ少なくするように工夫が必要です。

③将来の成果の糧となる時間

→単純に多ければ良いわけではないので、見込との兼ね合いが必要です。

④自己の成長のための時間

→業務時間外で意識的に確保していく必要があります。

⑤何の成果も生まない時間

→この時間をいかに多く見つけ出し、他の時間に振り替える事が最も重要です。
すなわち、今の1日の時間の使い方を見つめ直し「その作業が成果を生むか」どうかを
判断し、より多くの成果を生み出せる作業に多くの時間を使えるように時間の使い方を
考え直すことが生産性の向上に繋がると言えます。
では、多くの業務を遂行する上でどの業務に多くの時間を投入するべきかの
「業務の優先順位」はどのように設定すると生産性が向上するのでしょうか。
業務の優先順位を決める際に必要な視点は、
「どの業務からどういう順番で終わらすことで最も全体の生産性があがるか」
となります。
その視点で業務の優先順位を設定する際に用いられる手法として、
「5つのPの定理」が上げられるます。
「5つのPの定理」とは、
①了解
②節約
③時刻
④埋込
⑤価値
の5つをPriority(優先順位)として設定する手法です。
「時刻」が既に決まっているアポでも、相手方の「了解」があれば変更することが
できます。また、「節約」になる(ついでにできる)業務は、多少「時刻」を変更しても
優先させることで、時間を有効に使うことができます。
そして、「時刻」が決まれば空き時間が明確になります。この空き時間にできる業務を
入れることが「埋込」となります。
更に、「時刻」が決まることでその日中にできない業務を発見することができます。
全ての業務を行えないときには、業務の「価値」に着目して「価値」が低いものは
他の日に回すことを検討する必要があります。
「5つのP」の具体的な考え方は次のようになります。

了解のP

「了解のP」の基本的な考え方は、「相手の意向が最優先される」ということに
なります。
逆説的に捉えると、「相手の了解があれば、優先順位の変更が可能である」と言えます。
仕事とは依頼人(顧客や上司)の了解水準に合わせる必要があるので、業務を行う上では
常に「顧客や上司の了解水準を確かめた上での業務遂行」が重要となります。

節約のP

「節約のP」とは、文字通り時間を節約するためのPriority(優先順位)のことです。
例えば、以前に友人からご馳走になった御礼をしなければならないと考えているとします。
しかし、特に急いでいる訳ではないので御礼の品を買いに行くという作業の優先順位は
あまり高くありません。
その状況で、デパートの近くにある銀行に行く用事が発生したとします。
銀行に行く用事のついでにデパートに寄って御礼の品を買いに行くことで
わざわざ御礼の品を買いに行くという時間を節約することができます。
優先順位のあまり高くなかった御礼の品を買うという作業が、デパート近くの
銀行に行く用事ができた時点で急に優先順位が高くなります。
このように、時間を節約するために一時的に優先順位が高まる作業を考慮して
スケジュールを立てることが、「節約のP」なのです。

時刻のP

「時刻のP」とは、時刻が決まっていることが優先されるということです。
但し、ここで重要なのは顧客のアポや会議の時間を守れということではなく
「時刻のPriority(優先順位)をどのようにコントロールするか」となります。
時刻のPを上手くコントロールするために、相手の了解を得た上で
ついでにできる作業を行っていくことが上手な時間の使い方に繋がると言えます。

埋込のP

「埋込のP」とは、突然空いた時間やスケジュールの空白部分に、
特に急ぐ訳ではないけれど空いた時間で処理できる業務を行うことです。
時刻のPが決まることで決定した時刻と時刻の間に空白部分が発生します。
その空白部分を有効に活用することができれば、無駄な時間を削減し
生産性を向上できることでしょう。

価値のP

「価値のP」とは、成果に着目したPriority(優先順位)で、どちらの業務から先に
行うのかを迷った時には、成果のはっきりしている(成果の大きい)業務から行う
という考え方です。
生産性という観点からは、成果が上がるかどうかよくわからない業務の優先順位は
あまり高くなく、成果の見込まない業務はその日に行うべき業務からは思い切って
外すことが重要になります。
その分の時間を成果が見込める業務の投入することで、生産量を上げることができます。
このように、今の1日の時間の使い方や行っている業務を分析し、
より効果が上がる効率の良い時間の使い方を行うことで、限られた時間で多くの成果を
出すことができることでしょう。
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